北海道美唄市の活動
美唄市のやさしい日本語の思い
やさしい日本語は自然災害の時に巻き込まれた外国人に知らないといけない必要な情報を伝えるものとして日本中に活用されてきました。まだ多くの人は「やさしい日本語」と言われたらピンとこないかもしれませんが、札幌や東京の観光地や入国管理国などに足を運ぶたびにやさしい日本語で書かれた情報が増えていることからやさしい日本語が広がりつつあり、多くの場所で用いられることがあきらかです。しかし、やさしい日本語はただの情報発信のツールではなく、それ以上に大事な役割や可能性を持っています。それは、日本人と外国人をつなげることを通して日本文化を伝えるというものです。やさしい日本語で日本のこと、そして美唄のことを伝えたいという強い思いは美唄市のやさしい日本語の取り組みの原動力になっています。
大きな観光施設がなく、観光客を呼び込むのに四苦八苦の美唄市の観光はかなり厳しい状況にあります。外国人に来てもらうことはなおさらです。でも、一般観光で負けても、外国人にとって美唄は大きな資源の持ち主です。いや、美唄だけではない。日本である限りどこでもそうなのです。その資源は日本語というものです。日本語を学習している、日本文化に興味があるという外国人には日本語ほど価値のある観光はありません。この面で美唄市は率先して日本語を通して思い出になる体験型の観光に力を注いでいます。
やさしい日本語をはじめたきっかけ
英語をはじめとする外国語対応に限度を感じたことがきっかけで2018年にやさしい日本語の取り組みが始まりました。英語などを操る人材不足が一因で外国人観光客には完全な外国人対応ができないため、日本人に負担の低いやさしい日本語を取り入れ、日本語での観光を開始することになりました。
目的
やさしい日本語は日本人にとって操りやすい上に外国語を学ぶ必要がないため、負担が低く効率の良いインバウンド対応対策だと言えます。日本語を学んできたお客さんには日本語は楽しみの一つです。自分が覚えた日本語を実践するのはみんなのやりたいことでしょう。自分が発した日本語が返ってきた時、または誰かから英語ではなく、日本語で話しかけられた時は、最高に気持ちが良いです。美唄市のやさしい日本語では、そのように満足がいく日本語の体験を提供することが目的です。
構想
訪れてくる外国人が美唄市民と友達になって帰ることは美唄市の理想です。美唄市に友達がいる、という状況を作ることが外国人観光客が美唄のファンになり何回も来てくれることに繋がります。友達を作る上で欠かせないのは交流です。話し合い、笑い合い、お互いのことを知り合うことは重要です。外国人が相手となると、言葉がその交流を妨害する可能性があります。それを防ぎ充実した交流を図るには言葉の問題にどう向き合うかが果たしてカギを握っています。その課題に対しての美唄市の答えは「やさしい日本語」です。外国人相手に合わせて調整しながら日本語で話すという戦略です。日本語は日本の最も大事な文化です。毎日生きているその言葉を味わってもらうことほど、日本を体験する方法はないでしょう。これはやさしい日本語の魅力であり、役割です。文化を伝えることです。
そのような文化体験ができる典型的な形は交流会です。交流会といえば、市民会館のような場所で席を引きみんなが話し合うというイメージが浮かんでくるかもしれませんが、それに限定せずに、複合的な形で交流を他の活動に組み合わせるような「交流会」を提供するようにしていきます。そういったイベントでは、市民と外国人が一緒に参加し仲良くなるイメージを目指しています。
今までの取り組み
- 2018年2月
- ・『<やさしい日本語>と多文化共生シンポジウム』(東京)に出張・聴講
・東海大学平塚校で加藤好崇教授と面会し、市の構想について相談 - 2018年4月
- ・タイ・ラージニースクール学生向け市長挨拶を「やさしい日本語」で実施
・タイ文化フェスティバル市長挨拶で「やさしい日本語」でのおもてなしを宣言、「やさしい日本語」を紹介するパンフレット配布
・東海大学・加藤好崇教授を講師に美唄初の「やさしい日本語」勉強会を開催 - 2018年6月
- ・「やさしい日本語」講座(全5回)美唄サテライト・キャンパスサポート講座として実施
・「やさしい日本語」講演会を開催 講師:荒川洋平教授(東京外国語大学) - 2018年7月~8月
- ・台湾・中華大学観光学院インターンとの交流
- 2018年9月
- ・第一回 東海大学「やさしい日本語」交流ツアーでの交流
・「やさしい日本語」講座など - 2018年11月
- ・箱根「一の湯旅館」で市の取組みを紹介・意見交換
- 2018年12月
- ・ゴルフ5カントリー美唄コースにて「やさしい日本語」の出張講座
- 2019年2月
- ・「インバウンドの新しい風 『やさしい日本語』で観光客を迎えよう」(大修館書店 加藤好崇編・著)に市の取組みについて寄稿
- 2019年3月
- ・東海大学大学院・川井望さんによる市の取組み調査に対応
・「やさしい日本語」の講演・講座を実施
・観光物産協会ウェブページの多言語対応に「やさしい日本語」を追加 - 2019年4月
- ・タイ・ラージニースクールのホストファミリー向け「やさしい日本語」講座
・タイ・ラージニースクールの学生向け市長挨拶を「やさしい日本語」で実施 - 2019年6月
- ・「インバウンドで使う『やさしい日本語』シンポジウム」(東海大学高輪校)で事例紹介
- 2019年7月
- ・朝日新聞夕刊「現場へ!」欄 市の取組みについて特集記事が掲載
- 2019年8月
- ・台湾・松田塾(日本語学校)が参加する教育旅行との交流会を開催
- 2019年9月
- ・第二回 東海大学「やさしい日本語」交流ツアーでの交流
・道観光振興機構との共催 「やさしい日本語」講座 - 2019年10月
- ・タイ・ラチャモンコン大学高校生 教育旅行との交流に活用
- 2019年11月~12月
- ・北海道大学生訪問・交流会
- 2020年4月
- やさしい日本語ブログの立ち上げ
- 2020年5月
- やさしい日本語・やさしい英語の缶バッチを作成
- 2020年7月
- 北海道大学留学生と市民のオンライン交流
(美唄市地域おこし協力隊 ジェイムズ・マッキンタイア)